2011年12月14日

近視の進行予防について

小学校低学年までは視力がよかったはずなのに、学年が上がるにつれて視力が下がっている子供さんが増えていませんか?
子供は体の成長とともに眼軸(目の前後の長さ)が長くなるため、成長期に近視が進行しやすくなります。生活環境や遺伝的な要素も関係しますが、二十歳前後まで近視は進行すると言われています。
近視で視力が下がった場合、通常眼鏡が処方されますが、子供の場合眼鏡をかけても眼軸は年に平均0.28mmずつ長くなり、近視の度数は年に平均0.7Dずつ進行していくというデータがあります。近視の進行を予防する眼鏡として、以前は累進屈折力レンズが良いと言われていましたが、実際の近視の抑制率は12%にすぎず、十分な効果はないようです。

近年、近視の進行予防治療として、オルソケラトロジーと低濃度アトロピン点眼の有効性が報告されており、岡眼科でも治療を行っています。

オルソケラトロジー


オルソケラトロジーとは、寝ているときに特殊なハードコンタクトレンズを装用して近視を矯正する治療法です。日中は裸眼で過ごすことができます。
近年、オルソケラトロジーにより小児の近視進行を抑制できる可能性が報告されていますが、先日行われたアジアメディカルコンタクトレンズセミナーでは、日本人小児のデータでその有効性が報告されました。
眼鏡装用群とオルソケラトロジー治療群で5年間における眼軸長の変化量を比較したところ、眼鏡群で1.41mm±0.69mmであったのに対し、オルソケラトロジー群では1.00mm±0.48mmと有意に眼軸伸長を抑制していました。この結果より、オルソケラトロジーの長期継続は小児の近視進行を抑制する効果があると考えられます。また、早期に治療を開始するほど抑制効果が強くなるといわれています。

オルソケラトロジーは目への負担が少なく、装用をやめると元の状態に戻るので、子供の治療にも安全におこなわれています。スポーツをしていて眼鏡では不自由なお子様や、近視はあるけど眼鏡をかけたくないお子様にもお勧めです。
近視が強い場合や乱視が強い場合には十分な効果がでないこともありますので、担当医までご相談ください。


低濃度アトロピン点眼


海外で効果が認められている治療法です。眼軸長、屈折値の抑制率は60〜80%で、近視の進行を3分の1に抑えることができます。眼鏡を装用中のお子様も、アトロピン点眼を行うことで度数が強くなっていくのを最小限に抑えることができます。
アトロピン点眼には副作用もありますので、事前に十分な問診と説明を行います。

<眼鏡について>
軽い近視の場合、黒板が見えるからと眼鏡をかけずに過ごしているお子様も多いですが、周辺網膜にピントが合わないため、眼軸が長くなって近視が進行します。また、度数の弱い眼鏡をかけている場合も同様に近視が進みやすくなります。近視の進行を予防するためにはきちんと度数の合った眼鏡をかけることが大切です。

<仮性近視について>
仮性近視とは、目の調節による一時的な近視です。近くにピントを合わせた状態が続くと水晶体の厚さを調節している毛様体が異常に緊張して、一時的に近視の状態になってしまいます。治療は調節麻痺剤、調節改善剤の点眼治療と週一回のトレーニングを行います。
仮性近視の場合でもその状態が長く続くと回復が期待できなくなってしまいますので、早めの治療が大切です。

<近視と生活環境>
近視は遺伝的な要素も関係していますが、昔の子供に近視が少なく現代の子供に近視が多いのは、生活環境が大きく関係しています。環境要因としてテレビやパソコン・ゲーム・携帯電話などがあります。
近視の進行を防ぐために生活で気をつけること
@勉強するときや本を読む時は 十分な明るさの下、正しい姿勢で30センチ以上離して見る
A勉強や読書を1時間ぐらいしたら、10分間くらい目を休ませる
B長時間のゲームやテレビ、パソコン、携帯メールは控える
C屋外でたくさん遊ぶ
海外の研究では、晴天時に屋外で遊ぶことが近視の進行を予防するというデータが報告されています 。遠くを見ることで周辺網膜にもピントを合わせることができ、眼軸が長くなるのを抑制するためです。勉強も大事ですが、外でたくさん遊ぶこともとても大切です。


お子様の近視でお困りの方、進行を予防したい方は岡眼科までお気軽にご相談ください。



岡眼科クリニック 近藤美鈴

 

 

posted by 眼科医ドクターのコラム at 00:00| ドクター美鈴