2013年02月12日

ドクター美鈴の手術学会報告

1月25日から27日にかけて日本眼科手術学会が開催されました。
福岡での学会開催ということで、25日、26日を休診にさせていただき医師スタッフ25名で学会に参加してきました。
患者様には学会中診療をお休みすることでご迷惑をおかけして申し訳ございませんでした。

今回の学会で興味深かったのは、術後のドライアイについての講演です。
岡眼科では、多数の多焦点眼内レンズ手術、白内障手術、屈折矯正手術を行っていますが、術後視力が1.0以上でているにもかかわらずかすんで見えづらい、膜がかかって見えにくい、見え方が不安定と言われる患者様が時々いらっしゃいます。
これまでは、患者様の訴えと検査所見が一致せず、頭を悩ます事が多かったのですが、そのような患者様は実用視力が低下している事が分かりました。
この実用視力が低下する原因がドライアイです。
これまでドライアイは病気ではないと思われがちでしたが、乾燥感や異物感、痛みなどの眼不快感だけではなく、視機能異常を来す疾患と定義されています。

今回の学会で行われたモーニングセミナーでは、白内障手術後約22.4%に術後ドライアイを認めたと報告されていました。
術後ドライアイになる原因は、手術自体の侵襲や、術後の点眼薬による角膜知覚低下が原因と考えられます。
術後ドライアイに対しては、ムチン分泌促進薬やヒアルロン酸の点眼を行います。点眼でも効果がみられない場合には、涙点プラグ(液体コラーゲン)挿入を行います。
講演では、非ステロイド性抗炎症薬を中止し、1ヶ月ムチン分泌促進薬点眼を行ったところ、BUT(涙液層破壊時間)の改善、角膜染色スコアの低下、不快感の改善を認めていました。
また、元々ドライアイの方は、術前1ヶ月前よりムチン分泌促進薬点眼を行うことで、術後の視力、BUTが安定するという報告がありました。
術後の見え方をより良いものにするために、元々涙液分泌低下やBUT低下を認める方には、術前からのドライアイ治療が重要だと言えます。

岡眼科でも本年1月より実用視力計を導入しました。視力が良好であるにもかかわらずかすみを訴えられる患者様や、術後なかなか視力が出ない患者様に実用視力の測定を行ったところ、検査開始時に1.0以上見えていた視力が、1分間の測定中に0.5以下まで低下していることがしばしば見られました。悪い方では0.1以下まで低下する方もいます。
通常の視力検査で瞬間的に1.0以上の視力が出ても、平均的には0.5以下しか見えていないということなのです。
ドライアイをきちんと治療することで実用視力が改善していきます。
かすみを訴えられている患者様で、実用視力低下を認めた場合には、点眼や涙点プラグ等のドライアイ治療を積極的に行っていきたいと思います。

また、眼瞼痙攣でも実用視力低下を来します。眼瞼痙攣はしばしばドライアイ症状に隠れて見逃されることも多いため、岡眼科では症状の改善が見られない場合には速瞬テスト強瞬テストを行い、異常を認めた場合にはボツリヌス注射を行っています。

乾燥症状がなくても、かすみ目や膜がはってみえにくい場合にはドライアイが原因の場合がありますので、そのような症状のある方は岡眼科までお気軽にご相談ください。

岡眼科クリニック 近藤美鈴


 

 

posted by 眼科医ドクターのコラム at 00:00| ドクター美鈴